東 アジア ニュース。 東アジアは「コロナ後」の勝者なのか(ニュースソクラ)

東アジアは「コロナ後」の勝者なのか(ニュースソクラ)

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今や新型コロナ肺炎のエピセンターとなって経済活動が止まった米国、欧州とは好対照だ。 感染の発生地、武漢市の封鎖解除をライトアップで迎えた中国や、コロナ対応が評価され総選挙で与党が圧勝した韓国などでは、一種の戦勝ムードも漂う。 コロナ禍を機に、西洋の覇権に代 わり東アジアの時代が来る、と高揚した声も聞こえてくる。 「眠らせておけ。 中国が目覚めれば世界が震撼する」とはナポレオンの言。 その時代でも、経済史家アンガス・マディソンの推計では、中国のGDP(購買力平価)は世界の3割弱、フランスの5倍以上あった。 西洋中心史観を批判する歴史家、アンドレ・グンダー・フランクは著書「リオリエント」で、世界経済の中心は長らくアジア、とりわけ中国にあったとした。 欧州は「18世紀末から19世紀初頭にかけての時期になってはじめてNIEs(新興工業地域)の1つとして現れてきた」。 西洋の覇権は短い挿話とする彼は「今日の東アジアにおいて経済的にもっともダイナミックな地域は、1800年以前と全く同じ」と指摘した。 「東アジアを見習え」。 コロナ対策をめぐり欧米メディアに、そんな論調が増えた。 PCR検査を徹底した韓国、台湾やシンガポールの初動の素早さ、AI(情報技術)の活用などが、持ち上げられることが多い。 政策迷走が不評の日本にしても、死者数ではG7(主要7か国)でケタ違いに少ない。 米国、イタリア、フランス、英国が5ケタ、ドイツ、カ ナダが4ケタ、日本は3ケタで踏みとどまる。 中国の初動の失敗を責める欧米メディアも、都市封鎖などで見せた強権ぶりに「ドラコニアン」(過酷)と眉をひそめつつ、中国流防疫対策が効果を挙げたこと自体は、認めている。 欧米メディアの評価に呼応するように、東アジアのメディア(例えば 韓国など)で「西洋の没落」や「西洋から東洋への覇権移動」を公言する論説が目につくようになった。 世界史の振り子が戻り、東アジアが「コロナ後」の勝者になるのだろうか? そう簡単ではあるまい。 立ちはだかる2つの大きなリスクがある。 人 口構造のリスクと、地政学的リスクだ。 人口学者ポール・モーランドの著書「人口で語る世界史」(原題The Human Tide で、東アジアに割いた章の表題が、第1のリスクを言い当てている。 「日本、中国、東アジア 老いゆく巨人たち」。 総務省が先週発表した人口推計(2019年10月1日時点)で、日本の人 口は9年続けて前年割れで前年比27. 5万人減った。 減少率は統計開始以来の最大。 外国人が20万人増えたにもかかわらずだ。 モーランドは前掲書で、世界最速の高齢化と、日本政府のGDP比債務残高が世界ワーストワンなのは、関連があるとみている。 中国が1月発表した昨年の出生者数は1465万人で、大躍進政策の失敗 で餓死者が出た1961年以来の少なさだった。 生産年齢人口は13年にピークを打っていて、遠からず総人口も減り始める。 モーランドは、急速な高齢化で中国は「せいぜい中所得国」と、中国人が恐れる「未冨 先老」(豊かになる前に高齢化する)をほのめかす。 2月に出た韓国の19年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は、0. 92人と世界最低を更新した。 今年から人口減り始めるという。 台湾やシンガポールも、合計特殊出生率は1を少し上回る程度。 東アジアは、人口減・高齢化のリスクを乗り越えられるのか。 第2の地政学的リスクも難題だ。 貿易摩擦で始まった米中の確執は、コロナ禍で輪がかかった。 トランプ米大統領の中国とWTO(世界保健機関)の責任追及が止まらない。 中国は、多くの国々に医療チームや医 療物資を送る「マスク外交」で対抗するが、米中のデカップリングは当分、修復されそうにない。 台湾と香港市民の中国離れも止まりそうにない。 中国と意を通じた香港当局が先週、民主派の大物ら15人を一斉逮捕した。 中国空母「遼寧」が今月半ば、随伴艦5隻と沖縄本島と宮古島の間の海峡を抜け、台湾の 東部と南部の沿岸を航行して演習を行い、けん制した。 韓国の総選挙では与党が、親日清算を掲げて大勝した。 韓国経済界が望む日韓通貨スワップも協議どころではない。 日韓の冷え切った関係は 尾を引きそうだ。 最高指導者の健康不安説も流れる北朝鮮は、ミサイル実験 を繰り返し、平和を脅かす存在を誇示している。 個別には、コロナ対応で点数を稼ぎもする東アジアの国・地域だが、いがみ合いの構図をそのままに、世界を主導できるだろうか。 上智大学経済学部卒業。 日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。 著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版).

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今や新型コロナ肺炎のエピセンターとなって経済活動が止まった米国、欧州とは好対照だ。 感染の発生地、武漢市の封鎖解除をライトアップで迎えた中国や、コロナ対応が評価され総選挙で与党が圧勝した韓国などでは、一種の戦勝ムードも漂う。 コロナ禍を機に、西洋の覇権に代 わり東アジアの時代が来る、と高揚した声も聞こえてくる。 「眠らせておけ。 中国が目覚めれば世界が震撼する」とはナポレオンの言。 その時代でも、経済史家アンガス・マディソンの推計では、中国のGDP(購買力平価)は世界の3割弱、フランスの5倍以上あった。 西洋中心史観を批判する歴史家、アンドレ・グンダー・フランクは著書「リオリエント」で、世界経済の中心は長らくアジア、とりわけ中国にあったとした。 欧州は「18世紀末から19世紀初頭にかけての時期になってはじめてNIEs(新興工業地域)の1つとして現れてきた」。 西洋の覇権は短い挿話とする彼は「今日の東アジアにおいて経済的にもっともダイナミックな地域は、1800年以前と全く同じ」と指摘した。 「東アジアを見習え」。 コロナ対策をめぐり欧米メディアに、そんな論調が増えた。 PCR検査を徹底した韓国、台湾やシンガポールの初動の素早さ、AI(情報技術)の活用などが、持ち上げられることが多い。 政策迷走が不評の日本にしても、死者数ではG7(主要7か国)でケタ違いに少ない。 米国、イタリア、フランス、英国が5ケタ、ドイツ、カ ナダが4ケタ、日本は3ケタで踏みとどまる。 中国の初動の失敗を責める欧米メディアも、都市封鎖などで見せた強権ぶりに「ドラコニアン」(過酷)と眉をひそめつつ、中国流防疫対策が効果を挙げたこと自体は、認めている。 欧米メディアの評価に呼応するように、東アジアのメディア(例えば 韓国など)で「西洋の没落」や「西洋から東洋への覇権移動」を公言する論説が目につくようになった。 世界史の振り子が戻り、東アジアが「コロナ後」の勝者になるのだろうか? そう簡単ではあるまい。 立ちはだかる2つの大きなリスクがある。 人 口構造のリスクと、地政学的リスクだ。 人口学者ポール・モーランドの著書「人口で語る世界史」(原題The Human Tide で、東アジアに割いた章の表題が、第1のリスクを言い当てている。 「日本、中国、東アジア 老いゆく巨人たち」。 総務省が先週発表した人口推計(2019年10月1日時点)で、日本の人 口は9年続けて前年割れで前年比27. 5万人減った。 減少率は統計開始以来の最大。 外国人が20万人増えたにもかかわらずだ。 モーランドは前掲書で、世界最速の高齢化と、日本政府のGDP比債務残高が世界ワーストワンなのは、関連があるとみている。 中国が1月発表した昨年の出生者数は1465万人で、大躍進政策の失敗 で餓死者が出た1961年以来の少なさだった。 生産年齢人口は13年にピークを打っていて、遠からず総人口も減り始める。 モーランドは、急速な高齢化で中国は「せいぜい中所得国」と、中国人が恐れる「未冨 先老」(豊かになる前に高齢化する)をほのめかす。 2月に出た韓国の19年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)は、0. 92人と世界最低を更新した。 今年から人口減り始めるという。 台湾やシンガポールも、合計特殊出生率は1を少し上回る程度。 東アジアは、人口減・高齢化のリスクを乗り越えられるのか。 第2の地政学的リスクも難題だ。 貿易摩擦で始まった米中の確執は、コロナ禍で輪がかかった。 トランプ米大統領の中国とWTO(世界保健機関)の責任追及が止まらない。 中国は、多くの国々に医療チームや医 療物資を送る「マスク外交」で対抗するが、米中のデカップリングは当分、修復されそうにない。 台湾と香港市民の中国離れも止まりそうにない。 中国と意を通じた香港当局が先週、民主派の大物ら15人を一斉逮捕した。 中国空母「遼寧」が今月半ば、随伴艦5隻と沖縄本島と宮古島の間の海峡を抜け、台湾の 東部と南部の沿岸を航行して演習を行い、けん制した。 韓国の総選挙では与党が、親日清算を掲げて大勝した。 韓国経済界が望む日韓通貨スワップも協議どころではない。 日韓の冷え切った関係は 尾を引きそうだ。 最高指導者の健康不安説も流れる北朝鮮は、ミサイル実験 を繰り返し、平和を脅かす存在を誇示している。 個別には、コロナ対応で点数を稼ぎもする東アジアの国・地域だが、いがみ合いの構図をそのままに、世界を主導できるだろうか。 上智大学経済学部卒業。 日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。 著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版).

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