モブサイコ 100 夢 小説。 [ONE] モブサイコ100 第01

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モブサイコ 100 夢 小説

もうどれぐらいこうしているのだろう。 30分か1時間か…。 何も言わず、ただ街の灯りを見下ろしていた。 私を背後から抱きしめるようにエクボが座っている。 よく身体を借りてくる、片耳の欠けた大柄な男性だ。 ここは神樹の頂上。 私たちを照らすのはエクボが持ってきたランタンの灯りと青白い月光だけ。 街の喧騒は聴こえず、ただ静寂があった。 ウィルオウィスプ 「ゆり、ちょっと俺様と散歩に行こうぜ」 そう言ってエクボはハロウィンパーティーの会場から私を連れ出すと 人目につかない夜の公園に向かった。 「んじゃしっかり掴まってろよ」 「え、ちょっと!?」 よいしょっと掛け声をかけると私を抱き上げて走り出した。 そのまま階段の一番上からジャンプするとそのまま空へ駆けあがった。 みるみるうちに家やビルが小さくなる。 あまりの高さに身体が強張って、エクボのスーツを握る手に力が入る。 「空なんか飛べたの!?」 「んー?…まぁ神樹のおかげじゃね?」 いろいろ訊きたかったのにやっと出た質問はなんとも間が抜けていた。 そしてそれに答えるエクボも冗談めかして胡麻化しているように思えた。 「ほい、到着」 そう言ってそっと降ろされたのは大きな大きなブロッコリーのてっぺん。 そう、神樹の上だった。 「ここ座れよ」 「うん」 一番見晴らしのいい場所に手招かれそこに腰掛ける。 エクボも私を夜気の冷たさから守るように私を後ろから抱えるように座った。 それから今まで二人とも何も話さなかった。 抱かれた背中が温かい。 私を抱きしめる腕も逞しく、時折私の頭を優しく撫ぜる手も大きい。 でも、すべては借り物。 エクボがこの名も知らぬこの人に憑依して借りてきたものだ。 本当のエクボは彼曰く「上級悪霊」で、緑色のふわふわした姿だ。 面白いことにその時の感情で色が変わるらしい。 エメラルド、緑青、萌黄、翡翠…どの色もどの感情も私は好きだった。 ある日ハロウィンのことをいろいろ調べていたらドキリとする記事を見つけた。 『ウィルオウィスプ 天国にも地獄にも行けず拠りどころを求めて彷徨っている死者の魂 』 時に青白く、また緑色の怪しい光を放つ、地獄の劫火から取り出された石炭のランタンを持ち彷徨う。 この世の終わりまでただ独り彷徨う魂…。 それはまるでエクボのようだ、と思った。 自業自得とはいえあまりに切ない。 私の心がぎゅっと縛られたように苦しくなった。 そのことを思い出した私は少し身じろぎしてエクボを見上げた。 エクボもそれに気が付いて私を見下ろす。 視線が絡み私の目と心はエクボに捕らわれた。 憑依しているからか、黒いはずの瞳に僅かに緑の燐光が点ってる。 ウィルオウィスプ、ウィルオウィスプ。 この世の終わりまで彷徨う貴方に何をしてあげられるだろう。 私は貴方にしばしの休息を与えられるのだろうか。 私は手を伸ばしてエクボの手を握ると、真っ直ぐにその瞳を見つめた。 「エクボは…この世の終わりまで彷徨うの?それともそれに厭きたから神になって居場所が欲しいの?」 少し掠れた声でそう問いかけると、エクボは驚いたように少し身体を震わせ、それから遠くを見た。 しばらくそのままでいると、やがて言葉を選ぶように私に語り掛けた。 「俺様が終わるときが、この世の終わりであればいい…そう思っていたよ…。 だが神になればこの世を終わりにしなくてもいいだろ?」 「そう…」 優しくて自分勝手なその言葉の裏に、長い間独りで彷徨っていた寂しさが滲んでいるような気がした。 「私は何度生まれ変わってもエクボの傍に行くよ。 たとえエクボの炎に魅かれ身を焼かれる虫になっても…。 」 だからもう寂しくなんかないと言いかけた私をエクボはきつく抱きしめた。 骨が軋みそうなほど強く、まるで私と一つに溶け合えばいいと言わんばかりに身体が熱かった。 何かを堪えるように身を震わす彼の背を私はただ撫ぜるしか出来なかった。 [newpage] エクボ ゆりをハロウィンパーティーの会場から神樹の上まで連れ出して小一時間、俺様は何も言えずにいる。 何かを察していたのかゆりも何も言わなかった。 後ろから抱きしめて座ったゆりの体温は心地よく、サラサラして良い香りがする髪に顔をうずめてみたりした。 言わなきゃいけないのは解ってる。 俺様はこの神樹の力を使い神になる。 調味市の全体を洗脳するまであと幾日もないだろう。 その時俺様はゆりをどうしたいのか、いまだ決められなかった。 相談所の奴等やシゲオ、そしてゆりの気持ちを裏切ることになるだろう。 しかしそれもほんの一時のことで、ほんの少しだけ、しかし強力な洗脳催眠を行えば また俺様は一緒に居られるのだから。 そのためにはこのポケットの中の飴をゆりに与えなければならない。 神樹の粉末が混ざったこの飴を身体に取り込めばより深く速く洗脳が完了するはずだ。 それが解っているのに何故か言い出せなかった。 躊躇うはずもないのに。 どうやって話を切り出すか悩んでいると、ふいにゆりが腕の中で身じろぎし俺様の手を握った。 この借り物の身体と比べてなんて小さくて柔らかいのだろう。 まっすぐ見つめてくる瞳の吸い込まれるような黒さが俺様の言葉を封じた。 そして少し掠れた声で俺様に問いかけた。 「エクボは…この世の終わりまで彷徨うの?それともそれに厭きたから神になって居場所が欲しいの?」 見透かされた…!そう思い身体がぎくりと震える。 その真っ直ぐな瞳に耐え切れず視線を外す。 いくつもの言葉がぐるぐると頭を駆け巡る。 こんな時あの詐欺師ならなんと答えるんだろうな。 俺様の心の内をまだ今は完全にはさらけ出せない。 しばし考えて言葉を選んで慎重に答えた。 勘の鋭いゆりにはバレてるかもしれねぇが。 「俺様が終わるときが、この世の終わりであればいい…そう思っていたよ…。 だが神になればこの世を終わりにしなくてもいいだろ?」 俺様はゆりが居るこの世界に係わりたかったんだ。 だが魂だけの俺様がゆりと共にあるのはこれしか方法が…。 「そう…」 「私は何度生まれ変わってもエクボの傍に行くよ。 たとえエクボの炎に魅かれ身を焼かれる虫になっても…。 」 こいつは、ゆりは!!なぜこんなにも俺様が焦れ渇望したこの言葉を投げかけるのだろう。 何も言えず衝動的に抱きしめた。 強く、強く、いっそこのまま一つに溶け合えばいい!! 借り物の身体ではなく俺様自身の身体で涙を流したい。 俺様自身の身体でゆりの熱を感じたい。 こんなにも身体が無いことを悔しく思うのは霊体になって初めてのことだった。 言葉も無くただ涙を流すまいと堪えている身体が震えた。 飴を無理にでも食わせて洗脳してしまいたいという想いと、このままでいてほしい想いが激しくぶつかり合う。 己が心の気が狂わんばかりの葛藤に、俺様はただ目の前の小さな身体に縋りつくことしか出来なかった。

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モブサイコ100

モブサイコ 100 夢 小説

これは良いアニメでした。 昨年から、Netflixなどでアニメばかり見ています。 最近は『鬼滅の刃』が大流行中で、2019年のベストアニメは『鬼滅の刃』という意見は分かるし、それだけの評価に値する作品だと思います。 とにかく面白いですからね。 しかし、『モブサイコ100』を見て考えが変わりました。 私の中で2019年のベストアニメは『モブサイコ100』ですね。 とはいえ、どっちが優れているとかではなく、単に、人の内面に焦点を当てた作品が個人的に好きと言うだけです。 シーズン1もシーズン2も何話か泣いてしまいました(最近随分涙もろくなった)。 そしてそのまま漫画も全巻セットを買って読みましたが、漫画の方も素晴らしい出来です。 そんな『モブサイコ100』ですが、すごい感動したので、興奮冷めやらぬうちにどんな作品なのかを語ってみます。 主人公は影山茂夫、通称モブ。 すさまじい超能力が使えるのですが、超能力を取ると、勉強もできないし、運動音痴だし、モテないし、まったく冴えない中学生。 そして、超能力以外に何の取り柄もない自分に悩んでいて、何とかして変わろうともがく思春期の真っただ中。 しかし、追いつめられると、感情が爆発して、それに伴いとんでもないパワーを発揮して、相手にぶつけてしまったりする。 しかも自分の超能力の持つすさまじい潜在的なパワーにうすうす気づており、自分がその能力に溺れ暴走して、いつかとんでもないことをしでかすのではないかと恐れている。 その結果、自身の超能力を隠して生きており、自分を普通じゃない存在にしている超能力を、むしろ不要なもの何の役にも立たないものと考えています。 人前では滅多に超能力を見せないだけでなく、何とかして超能力以外の魅力ある自分になろうともがいています。 そして、もう一人の主人公が、モブの師匠である、霊験新隆(れいげんあらたか)という、インチキ霊能力者。 「霊とか相談所」という怪しい事務所を構えていて、客からの、悪霊に取りつかれて困っているから除霊してほしいといった霊感相談で生計を立てています。 霊験自身は何の能力もないインチキ野郎なのですが、訪ねてくる客の相談自体が本当の所、本人が霊のせいと思っているだけで、霊とは無関係なものばかりなので、あれこれ誤魔化しながら、客の悩みを解決しています。 もっとも、時々、本物の悪霊などが登場するので、その場合には弟子であるモブを使い、「こんなの俺が出るまでもない雑魚だから、モブお前がやれ」と、モブを使って除霊します。 この霊験、詐欺師と言えば詐欺師なのですが、高額な壺を売るとかそういうことはせず、インチキ野郎なりの良心は持っていて、頭を使ってあれこれ工夫して、ボッタくることなく何とか顧客の悩みを解決しています。 なにより、まったく超能力が使えない一般人らしく、地に足付けて、毎日必死に霊能者として客のために働いています。 この物語の最大の見どころは師匠である霊験と弟子であるモブの二人の関係性にあります。 モブは何でこんなインチキ野郎を師匠と慕っているのかと言うと、内向的で何かと悩んで立ち止まりがちなモブに対して、霊験が、日々の出来事をポジティブに捉え、一歩一歩前に進む姿勢を見せるからです。 「結果として向こうは助かったんだからいいじゃないか」、「超能力?人の役に立ってるじゃないか」、「超能力が有ろうとなかろうと人は人でみんな同じ」など、自我の葛藤に悩む思春期の中学生に対し、大人として非常に暖かい手で背中を押してあげるため、モブは霊験のことを師匠として慕っています。 その一方で、霊験自身はと言うと、霊能ビジネスに強い思い入れがあるわけではなく、あれこれ社会に流れ流されしていくうちにこの仕事にたどり着き、ひょんなことでモブと知り合ったことから、この仕事を続けています。 心の中では、なんで自分はこんなことやってるんだろうかと、実は悩んでいます。 つまり、この作品のテーマは、モブと霊験に共通する、「なりたい自分」と「現実の自分」の間の葛藤にあります。 私が感動する作品は結局全部、「もののあわれ」ですが、今自分が置かれている状況は、自分のせいなのか自分以外のせいなのかわからず、そりゃ究極的には全て自己責任ということはできますが、誰だって、生まれた環境などの自分では選べないものにがんじがらめにされて生きています。 スポンサーリンク その、どうにもならない世の中すべてのことが、「もののあわれ」の「もの」ですが、「あわれ」を感じさせる「もの」の一つに、誰もが感じている、なりたい自分からは程遠い現実の自分というものがあります。 一部のトップスター以外、理想からかけ離れた現実の自分というのは、誰にとっても悩みの種です。 その点、多くのマンガやアニメでは、努力や友情などによって、主人公は成長し、夢をかなえて、スポットライトの当たる特別な存在に到達する作品が多いです。 しかし、この『モブサイコ100』という作品では、モブも霊験も理想とは程遠いまま、自分の中にある葛藤を抱えながらも、人間として成長していく姿が描かれます。 もっとも、さえない現実の自分という葛藤を抱えながら前に進むと言っても、妥協・諦めとか、挫折を受け入れるとか、そういう話ではありません。 社会の中における特別な存在にはなれなくとも、自分以外の人間と時には衝突や軋轢を起こしつつも、助けあい足りないものを補いながら共生していく中で、一人一人が、お互いにとって特別な存在になっていくことに気づくわけです。 この、共に葛藤を抱えるモブと霊験の二人の間の不思議な関係が、互いにとってかけがえのないものになっていく過程が非常に感動的です。 社会対個人の枠組みの中で、各個人が能力を高めるという意味で成長しようと努力するものの、中々理想には近づけず悩むことになる。 しかし、社会から一目置かれる特別な存在という理想には近づけずとも、他者と共生していく中で、思いやりを持って接していく中で、能力云々とは関係なしに、互いに特別な存在になるわけです。 そして、個としての自己実現は達成できなくても、そういった他者との関わりの中に自分のアイデンティティーを見いだしていくことこそ人生の素晴らしさであるというストーリーです。 この作品は、超能力バトル漫画という側面もあるため、超能力を使う敵対勢力が出てくるわけですが、悪の組織のような見せかけの割に、実はそのような立派な存在ではなく、「社会」と対峙する「個」としての自分しか見ずに、超能力を使えるがゆえに「個」としての自分を特別だと勘違いしてしまい、世界征服だなんだと、子供じみたことを主張している様子が、他者と共生する「社会の一部としての自分」と向き合うことせずに、「個としての自分」のことばかり考え、子供のまま大人になってしまった可哀そうな大人たちと描写されています。 特別な存在になりたいのになれず、その葛藤のあまり、自分を特別な存在として扱わない社会が悪いという方向に進んで行く間違った思考展開が、単に社会と向き合うことを避けているに過ぎないという本質、また、その結果、他者と共生していく素晴らしさに気づけずに結局不幸になっているという点を、超能力を例に見事に描かれています。 その一方で、モブと霊験の関係は、純粋無垢な超能力少年とそれを利用するインチキ霊能力者の関係のようで、実はそうではなく、超能力云々なしに、子供のモブは、日々ポジティブに逞しく生きている霊験に本当に助けられているし、その一方で霊験も、モブを利用しながらも、いつの間にかインチキ霊能者なんてやることになった葛藤を抱えながらも、目の前のモブが超能力というスーパーパワーを持っているにもかかわらず、自分と同じように葛藤を抱えながら日々悩んで苦しんでいる様子をみて、結局才能あっても根本的な解決にはならないのかと、道を外さずに地に足付けて生きていくうえで、モブが重要な存在になっているわけです。 そして、超能力や霊能ビジネスと言った派手なものは関係なく、日常の中の些細な人間的な接触の中で、相手を思いやる行為の積み重ねにより、お互いがお互いにとって特別な存在になっていく過程を見事に描いていくわけです。 本当にいい話でした。 モブと霊験を軸に説明しましたが、ほかの登場人物もみな魅力的で、しかもみんな成長していく様子が素晴らしいです。 本当はもっとたくさん書きたいのですが止めておきます。 結局、漫画も全巻買ってしまい読みましたが、全部アニメ化されたわけではないので間違いなく第3期もいずれ登場するでしょうね。 第1期、第2期ともに素晴らしかったので、是非この流れのまま完結させてほしいな。 見てない人は是非どうぞ。

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#モブサイコ100 #夢小説 marshillmusic.merchline.comまとめ

モブサイコ 100 夢 小説

もうどれぐらいこうしているのだろう。 30分か1時間か…。 何も言わず、ただ街の灯りを見下ろしていた。 私を背後から抱きしめるようにエクボが座っている。 よく身体を借りてくる、片耳の欠けた大柄な男性だ。 ここは神樹の頂上。 私たちを照らすのはエクボが持ってきたランタンの灯りと青白い月光だけ。 街の喧騒は聴こえず、ただ静寂があった。 ウィルオウィスプ 「ゆり、ちょっと俺様と散歩に行こうぜ」 そう言ってエクボはハロウィンパーティーの会場から私を連れ出すと 人目につかない夜の公園に向かった。 「んじゃしっかり掴まってろよ」 「え、ちょっと!?」 よいしょっと掛け声をかけると私を抱き上げて走り出した。 そのまま階段の一番上からジャンプするとそのまま空へ駆けあがった。 みるみるうちに家やビルが小さくなる。 あまりの高さに身体が強張って、エクボのスーツを握る手に力が入る。 「空なんか飛べたの!?」 「んー?…まぁ神樹のおかげじゃね?」 いろいろ訊きたかったのにやっと出た質問はなんとも間が抜けていた。 そしてそれに答えるエクボも冗談めかして胡麻化しているように思えた。 「ほい、到着」 そう言ってそっと降ろされたのは大きな大きなブロッコリーのてっぺん。 そう、神樹の上だった。 「ここ座れよ」 「うん」 一番見晴らしのいい場所に手招かれそこに腰掛ける。 エクボも私を夜気の冷たさから守るように私を後ろから抱えるように座った。 それから今まで二人とも何も話さなかった。 抱かれた背中が温かい。 私を抱きしめる腕も逞しく、時折私の頭を優しく撫ぜる手も大きい。 でも、すべては借り物。 エクボがこの名も知らぬこの人に憑依して借りてきたものだ。 本当のエクボは彼曰く「上級悪霊」で、緑色のふわふわした姿だ。 面白いことにその時の感情で色が変わるらしい。 エメラルド、緑青、萌黄、翡翠…どの色もどの感情も私は好きだった。 ある日ハロウィンのことをいろいろ調べていたらドキリとする記事を見つけた。 『ウィルオウィスプ 天国にも地獄にも行けず拠りどころを求めて彷徨っている死者の魂 』 時に青白く、また緑色の怪しい光を放つ、地獄の劫火から取り出された石炭のランタンを持ち彷徨う。 この世の終わりまでただ独り彷徨う魂…。 それはまるでエクボのようだ、と思った。 自業自得とはいえあまりに切ない。 私の心がぎゅっと縛られたように苦しくなった。 そのことを思い出した私は少し身じろぎしてエクボを見上げた。 エクボもそれに気が付いて私を見下ろす。 視線が絡み私の目と心はエクボに捕らわれた。 憑依しているからか、黒いはずの瞳に僅かに緑の燐光が点ってる。 ウィルオウィスプ、ウィルオウィスプ。 この世の終わりまで彷徨う貴方に何をしてあげられるだろう。 私は貴方にしばしの休息を与えられるのだろうか。 私は手を伸ばしてエクボの手を握ると、真っ直ぐにその瞳を見つめた。 「エクボは…この世の終わりまで彷徨うの?それともそれに厭きたから神になって居場所が欲しいの?」 少し掠れた声でそう問いかけると、エクボは驚いたように少し身体を震わせ、それから遠くを見た。 しばらくそのままでいると、やがて言葉を選ぶように私に語り掛けた。 「俺様が終わるときが、この世の終わりであればいい…そう思っていたよ…。 だが神になればこの世を終わりにしなくてもいいだろ?」 「そう…」 優しくて自分勝手なその言葉の裏に、長い間独りで彷徨っていた寂しさが滲んでいるような気がした。 「私は何度生まれ変わってもエクボの傍に行くよ。 たとえエクボの炎に魅かれ身を焼かれる虫になっても…。 」 だからもう寂しくなんかないと言いかけた私をエクボはきつく抱きしめた。 骨が軋みそうなほど強く、まるで私と一つに溶け合えばいいと言わんばかりに身体が熱かった。 何かを堪えるように身を震わす彼の背を私はただ撫ぜるしか出来なかった。 [newpage] エクボ ゆりをハロウィンパーティーの会場から神樹の上まで連れ出して小一時間、俺様は何も言えずにいる。 何かを察していたのかゆりも何も言わなかった。 後ろから抱きしめて座ったゆりの体温は心地よく、サラサラして良い香りがする髪に顔をうずめてみたりした。 言わなきゃいけないのは解ってる。 俺様はこの神樹の力を使い神になる。 調味市の全体を洗脳するまであと幾日もないだろう。 その時俺様はゆりをどうしたいのか、いまだ決められなかった。 相談所の奴等やシゲオ、そしてゆりの気持ちを裏切ることになるだろう。 しかしそれもほんの一時のことで、ほんの少しだけ、しかし強力な洗脳催眠を行えば また俺様は一緒に居られるのだから。 そのためにはこのポケットの中の飴をゆりに与えなければならない。 神樹の粉末が混ざったこの飴を身体に取り込めばより深く速く洗脳が完了するはずだ。 それが解っているのに何故か言い出せなかった。 躊躇うはずもないのに。 どうやって話を切り出すか悩んでいると、ふいにゆりが腕の中で身じろぎし俺様の手を握った。 この借り物の身体と比べてなんて小さくて柔らかいのだろう。 まっすぐ見つめてくる瞳の吸い込まれるような黒さが俺様の言葉を封じた。 そして少し掠れた声で俺様に問いかけた。 「エクボは…この世の終わりまで彷徨うの?それともそれに厭きたから神になって居場所が欲しいの?」 見透かされた…!そう思い身体がぎくりと震える。 その真っ直ぐな瞳に耐え切れず視線を外す。 いくつもの言葉がぐるぐると頭を駆け巡る。 こんな時あの詐欺師ならなんと答えるんだろうな。 俺様の心の内をまだ今は完全にはさらけ出せない。 しばし考えて言葉を選んで慎重に答えた。 勘の鋭いゆりにはバレてるかもしれねぇが。 「俺様が終わるときが、この世の終わりであればいい…そう思っていたよ…。 だが神になればこの世を終わりにしなくてもいいだろ?」 俺様はゆりが居るこの世界に係わりたかったんだ。 だが魂だけの俺様がゆりと共にあるのはこれしか方法が…。 「そう…」 「私は何度生まれ変わってもエクボの傍に行くよ。 たとえエクボの炎に魅かれ身を焼かれる虫になっても…。 」 こいつは、ゆりは!!なぜこんなにも俺様が焦れ渇望したこの言葉を投げかけるのだろう。 何も言えず衝動的に抱きしめた。 強く、強く、いっそこのまま一つに溶け合えばいい!! 借り物の身体ではなく俺様自身の身体で涙を流したい。 俺様自身の身体でゆりの熱を感じたい。 こんなにも身体が無いことを悔しく思うのは霊体になって初めてのことだった。 言葉も無くただ涙を流すまいと堪えている身体が震えた。 飴を無理にでも食わせて洗脳してしまいたいという想いと、このままでいてほしい想いが激しくぶつかり合う。 己が心の気が狂わんばかりの葛藤に、俺様はただ目の前の小さな身体に縋りつくことしか出来なかった。

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