ライオンの家 ホスピス。 2020本屋大賞小川糸『ライオンのおやつ』あらすじと感想。

本屋大賞2位 ライオンのおやつ|小川糸 あらすじと感想

ライオンの家 ホスピス

彼女は残された日々を、瀬戸内の島のホスピス「ライオンの家」に入ることを決意する。 そこでは、週一度日曜日の午後3時のお茶会で、もう一度食べたいおやつをリクエストすることが出来る「おやつの時間」がある。 管理人のマドンナや入居者たちと出会い、雫はどのような最期を迎えるのか。 毎日を丁寧に生きたくなる物語。 印象的な言葉 死を受け入れるなんて、そう簡単にできることではなかった。 私は自分で、自らの死を受け入れたつもりになっていた。 でも、そうじゃなかった。 (中略)でも、本当の本当のところでは、まだ死にたくない。 私は、もっと生きたい。 『ライオンのおやつ』(ポプラ社) 小川糸 より 生きることは、誰かの光になること。 『ライオンのおやつ』(ポプラ社) 小川糸 より 感想 この物語は「終末医療」がテーマとなっています。 想像していた通り泣きました。 しかも序盤から泣きました。 33歳というのは今の私の年に近いです。 もし、今自分が余命申告されたらどういう気持ちになるのか想像さえ出来ません。 ホスピスに入った当初の雫は、自分が死ぬことについてどこか達観していた様子で冷静でした。 だけど、入居者たちの「死」などに触れていくことで、自分の心と向き合っていきます。 漫然と死を迎えるのではなく、最後の最後までその人らしく生きてこその死があると雫は気付きます。 そして、彼女の最後の言葉は「ごちそうさま」でした。 この物語は若い女性の死を、丁寧に、残酷に、そして暖かく描いているように思いました。 だから彼女の亡くなったあとも、残された登場人物だけでなく私も、悲しみだけでなく心温まる気持ちになったのかもしれません。 「どう死ぬか」ではなく、雫みたいに「どう生きるか」を心に留めながら日々を過ごしていきたいです。 そして、人生の最後のおやつも一緒に考えていきたいです。 終わりに 悲しいけどとても優しいお話でした。 「生きる」こと「死ぬ」ことについて深く考えさせられました。 今生きていることに感謝しながら、毎日を丁寧に過ごしたいと思います。

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【「本屋大賞2020」候補作紹介】『ライオンのおやつ』――33歳で余命宣告され...人生最後に食べたい「おやつ」をめぐる心温まる物語

ライオンの家 ホスピス

小さい頃は、家族や周囲の人びとが死んでしまうことが怖かった。 自分がいつか死ぬということに関しては、「いつか死ぬんだろうけれど今すぐではないだろう」と思い続けてきた気がする。 大人になると、死は身近になってくる。 いくつかの身近な死を体験したことも大きい。 また、昨今の災害を体験、もしくは間近に見て「自分も含めて人はいつ死ぬか分からない」と実感した人も多いのではないか。 自分はどんな死に方をするのか、どんなふうに最期を迎えたいのか、想像することもあるだろう。 小川糸『ライオンのおやつ』は、余命を告げられた女性、海野雫が主人公だ。 現在三十三歳。 それは彼女の享年となる予定の数字だ。 物語の冒頭、彼女は最後の日々を過ごすため、瀬戸内海の島にあるホスピスにやってくる。 あらかじめ主人公の死が予言されているのだから、辛気臭い話かと思われるかもしれない。 いやいや、最後の日々を辛気臭く過ごす義務なんて誰一人にもないのである。 雫も、決してしんみり過ごすつもりではない。 この淡々とした性格の女性は、ただただ穏やかに、海を見ながらゆっくり休み、ぐっすり眠って過ごしたいと思っている。 彼女の新居はホスピス、ライオンの家。 この家の代表は、メイドの服装をして髪をおさげにし、真っ赤なエナメルのストラップシューズをはいた老婦人、マドンナ。 もちろん通称だ(のちに、マドンナがそのような格好をしている理由も分かる)。 建物の外観は隠れ家ホテルのようで、部屋は広く、窓からは青空とぷっくりと膨らんだ黄色い果実が光るレモン畑、そしてその向こうに海が広がる景色が見渡せる。 大ヒット作『食堂かたつむり』の頃から、著者は食を大事にしていると感じさせてきたが、本作もまさにそう。 ライオンの家には料理担当の姉妹がおり、毎回丁寧な食事を提供してくれる。 朝は毎回異なる具材のお粥、昼はバイキング形式で日替わりサンドウィッチや太巻き寿司やスープやお味噌汁、夜は一人一人に精進料理を基本とするお膳が提供される。 希望すれば肉や魚も食べることができ、魚は100%瀬戸内産だ。 変わった習慣といえば、日曜日午後三時のおやつの時間。 ゲスト、つまり滞在者たちはもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストでき、そこから毎回ひとつだけ、思い出のおやつを忠実に再現した菓子が提供される。 誰の希望が通るかはマドンナによる抽選で決められ、それは当日まで明かされない。 一瞬、余命が短い人のリクエストを優先すればいいのにと思ってしまうかもしれないが、それだと選ばれた人が「自分の死期が近いのだ」と改めて認識してしまうことになるので、抽選という方法は非常に有効に思われる。 いつどこで食べて、何を感じたおやつなのか。 リクエスト者の名前は明かされないが、用紙に書かれたエピソードが読み上げられると、おのずと誰のものかが分かる。 そこからはその人の人生の大切な記憶、大切な経験、あるいは大切な人が見えてくるのだ。 雫の来し方はなかなか明かされない。 どうやら幼い頃に両親を亡くし、叔父に引き取られて育ったようだ。 ただ、その経緯や、これまでの生活が詳細に言及されないからこそ、読者は彼女の体験を、自分のことのような気持ちで寄り添って読み進められる。 死を見つめながらも、食事を堪能し、島の空気をいっぱい吸い込み、ゆっくりとした時間を過ごす。 他のゲストたちと交流がないわけではないが、適度な距離を保っているのも好印象。 島でワインを作る青年と互いに淡い好意を抱くが、深入りはしない。 でも、食や恋に突き動かされる姿は、余命を告げられたからといって、すべての欲望が消え去るわけでも諦めがつくわけでもなく、むしろそれらを積極的に堪能していいのだ、と思わせてくれる。 だが、どうしても、次第に雫の身体は衰えていく......。 それはやっぱり寂しくて切ないことだけれども、でも、雫のようにさまざまなしがらみから解き放たれ、本当に大切なものたちだけを大切に思いながら旅立てたら、と思わずにはいられない。 死と向き合うことは、そこに至るまでの日々を生きることでもある。 そう感じさせてくれる作品。 読みながら、自分はどんなおやつをリクエストするだろう、どんな形で死を迎えたいだろう、ときっと誰もが考えるはず。 それは、これまでどう生きてきて、この先どう生きていきたいのかを考えることでもある。 本作が死を描きながらも、生きることの物語になっているのは、著者がそれをよく分かっているからだろう。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 瀧井朝世(たきい・あさよ) 1970年生まれ。 東京都出身。 慶應義塾大学文学部卒業。 出版社勤務を経てライターに。 作家インタビュー、書評などを執筆。 著書に『偏愛読書トライアングル』(新潮社)、『あの人とあの本の話』(小学館)。 岩崎書店〈恋の絵本〉シリーズ監修。

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小川糸「ライオンのおやつ」のあらすじと感想

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小川糸「ライオンのおやつ」の登場人物 小川糸著「ライオンのおやつ」は、2019年10月にポプラ社から発売された長編小説。 全255ページ。 わたしは本を読んで泣いた経験がないと言いますか、いわゆる感動作と言われるジャンルの小説を避けているようなところがあるんです。 本を読んでいるときくらいは悲しい思いをしたくない、というのが理由なのですが、あえて泣ける本を読む方もいらっしゃるようですね。 結論としては、感動作ではあるのですが、読んでよかった!と思います。 日課にしている書店でのパトロールで、この本よく見るな~とは感じていたのですが、手書きのポップに書かれた「 感動作」というワードに強い拒否反応。 しかし地元の書店だけではなく、あちらこちらの大型書店でもおすすめ本として並んでいたため、読んでみることにしたのです。 結果的に泣いてしまったのですが、たまには人の推薦を素直に受け止め、感動作であろうとも(!)読んでみるものですね。 あらすじと感想に前に、 主な登場人物の紹介から。 海野雫 ホスピスで余生を送る主人公。 33歳。 マドンナ ホスピス「ライオンの家」の代表。 看護師。 狩野姉妹 姉のシマと妹の舞。 「ライオンの家」の調理担当。 田陽地 タヒチ君。 島に移住してワイン作りを行う若者。 小川糸「ライオンのおやつ」のあらすじ 主人公の海野雫は余命宣告を受けた後、瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」で、残りの人生を過ごすことを決めた。 かつてレモンが栽培されていたというこの島は「レモン島」と呼ばれ、どこへ行っても海がみえる温暖な地。 ライオンの家では週に一度、ゲストのリクエストに応えた「思い出のおやつ」が出される。 雫は自らの死と、どう向き合うのか。 また、リクエストしたメニューを前にしたとき、何を思うのかー。 小川糸「ライオンのおやつ」の感想 「ライオンのおやつ」は、久々に読む小川糸さんの作品。 主人公の雫と自分の年代がそう遠くはないということからも、共感できるかも?なんて思いましたが、死を目前にした彼女が思い悩んだであろう葛藤を感じるにつれ、共感しようなどとは思わずに読もうと思いました。 ホスピス・ライオンの家で雫が過ごした日々は穏やかなものでしたが、そこでの回想シーンはなかなか辛辣に映りました。 六花という犬と出会い、共に過ごせた雫は本当に幸せそうでした。 犬を飼っているとこういうことがあるよね、みたいな場面がたくさん出てきます。 小川さん、犬を飼われているのかな? 育った境遇(雫は、幼い頃に両親を事故で亡くしています)も複雑ですが、30代で余命を宣告されるというのはどういう気持ちなのでしょう。 育ての父よりも早く逝ってしまうと知ったときの心中を思うとやりきれませんよね。 治療したにもかかわらず、効果が出なかった雫の思いは、はかり知れないものがあったのだろうと感じました。 料理の描写がリアルで、ちょっとアレンジのきいたメニューが登場するのもツボでした。 レモン風味のおいなりさんとか、フルーツ粥とか。 マドンナがライオンの家というホスピスをはじめた理由や、メイド服を身に着けている理由も、感慨深いものがありました。 「ライオン」の由来にも納得です。 ゲストたちとのふれあいを通し、人生の機微に触れたような気がします。 最後に 不覚にも(?)、本を読んで泣いてしまうという…。 寝る直前に泣いてしまったため、翌朝は目が腫れておりました。 私も泣くんだ…な~んて、自分でもびっくり・笑。 この作品は、 泣けるとか泣けないとかではなく、ライオンの家のゲストたちを通して自分を見つめ直したり、周囲の人たちへ感謝するきっかけを作ってくれました。

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